時々、ひどく泣きたくなる時がある。目がぎちぎちと鈍い痛みを訴えた後、じわじわとぼやけていく視界。そして、溜まって零れる。
 泣く原因なんて、あってないようなものばかりで。この世界がものすごく窮屈に感じる夜とか、自分の存在理由が分からない昼とか、世界の終わりを考えてしまった夜とか、悲しい結末を思い浮かべた昼とか。薄っぺらいのに、私にはぶすぶすと突き刺さった。
 「終わりはいつ来るんだろう」
 「何? 何が?」
 「この世界」
 「世界って、地球? それとも、時代? 国?」
 漠然とした問いは、自らの頭を締め付けた。ぐぐぐぐ。
 「えー……分かんないよ、どうでもいいじゃん」
 「全然違うっつーの。国と地球、終わるとしたらどっちが現実味あると思ってんの」
 「もうっ、うるさいっ。世界っていったら世界なの! 国も人も動物も植物も地球も全部全部終わるの」
 「へえ。そんなことあんのかな」
 「だからいつ終わるのか訊いたの」
 「知らん」
 「だよね」
 随分とあっさりした会話が漏れる。
 私は体を倒し、ばふりとふかふかのソファに寝転がる。このソファ、そろそろ代え時かな。縫い目が裂けて、中の綿がぷっくりと飛び出ていた。
 「ねえ、私たちって、自分の未来すら分からないんだよ。自分のことなのにさ」
 「当たり前じゃん。そうじゃないと生きる意味がないし」
 「じゃあ何で私たちは生まれてきたの? ねえ何で?」
 「知らん」
 「バカ」
 静かに目を閉じる。暗闇。見慣れた景色が脳内に広がる。――星空。
 「何で泣いてんの」
 「知らん」
 「マネすんな」
 「うるさいバカ」
 ぽろぽろと零れる涙を、君はこう言うのだ。
 「涙って、流れ星みたいだよな」
 頬を伝う瞬間は、流星。零れ落ちたものは、流星塵。不必要で、意味のないもの。
 私は薄っすらと笑みを浮かべ、唇と唇が重なり合うのを静かに待つとする。

そのわりに

pulmo(お題拝借感謝)
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