「あずさ?」
 「そう」
 どうして君は、そんなに青いのだろうか。

 「いやあ、梓、あずさ」
 「憂」
 その細い指が俺の二の腕を確かに掴んだ。熱を帯びつつも汗の湿り気を感じないさらりとした白い肌が狂いそうなほど愛しくて、つい彼の可愛らしい桃色の唇にかぶりつくように接吻を落とす。ぱ、と唇を離すと、止め処なく流れる涙を舌で拭ってやる。彼の全てが愛しくて、彼の全てが憎いのだ。
 「う、い」
 絡み合う体温が、飛び交う愛が、辛うじて繋がる俺達の絆。何て頼りない絆だと自覚しつつ、他の繋がり方を俺は知らない。愛はこういうことで、友情なんてものはない。性欲処理の一歩上、君との繋がり。狂おしいほどに愛しい絆を、憎しみが纏う。

 「誰とも交わらないって、思ってた」
 「まじわる?」
 「そう」
 ふんわりとした彼の髪を撫でてやると、ぱっちりとした瞳を瞼で隠す。きゅう、と腹部を隠すように丸まった彼を布団越しにぽんぽんとあやすように叩くとやがて規則正しい寝息を立てた。  誰とも交わらないと思っていた。交わってはいけなかった。不可侵の美しさは、彼だって同じなのだ。誰か一人を愛したなら、それはきっと人間になってしまうから。人間でないことに価値があって、人間であることに咎がある。
 憎い、この汚らしい感情が。それでいて愛しい隣の温もりを手放せない俺は、人間なんだろうか。

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